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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



ギャギャギャギャ!



耳に痛い、嫌な摩擦音が激しく響く。
それも束の間。



「きゃあっ!」

「ぐっ!」

「でっ!」



ドフンッ!と勢いよく止まるそれに、反動で跳ねる体。
思わず悲鳴が上がる。



「と…止まった…」

「落ちるかと思ったさ…」

「地震で壊れてるな。まあ思ったより進めたので、此処からは階段だ」



ぷしゅー、と煙を出しながら目の前の扉が開く。
四角い個室のそれは、第六作業用リフト。
所謂作業用エレベーター。
その中で腰を抜かして座り込んでいるオレとリナリーに対し、一人全っ然ブレることなくリフトから降りるのはリナリーについていたルベリエ。



「ところで、なんっっで君がいるのかね。ブックマンJr.」

「えー?」



ぱんぱんと汚れた服を叩きながら、ギロリと鋭い眼孔を向けられる。

うわお超コワイ。
婦長に似て眼力強いもんなぁ、ルベリエ。

その顔にヘラッと緩い笑みで返せば、蔑むような目を向けられた。



「ふん…"記録"とやらかね?ブックマンは戦場に集るハイエナだな。まあ"規約"だから…好きにすればいい」

「どーも」



おー、よくわかってんじゃん。
ブックマンのこと。
表現が悪いけど、強ち間違っちゃいない。



「ラビ…」



そんなルベリエの言葉にか、気遣うように見てくるリナリーがオレの名を呼ぶ。

…行動を起こしてないと、崩れ落ちてしまうだけだったから。
武器庫に寄って、その後リナリーを追った。
レベル4のAKUMA。
そいつが南をオレから奪ったんだ。
イノセンスがないからって、オレには戦わない理由にはならなかった。



「止めに来たんじゃねぇから」



リナリーに目は向けず、言葉だけ返す。



「リナリーが決めたんなら、何も言えねぇし。ただ一緒に行かして」



止める気はない。
だからオレのことも止めないでいて欲しい。
命を投げ売る気はねぇけど…止まってられないから。
止まったら、きっとこのぽっかりと空いた胸の奥底にある"何か"が溢れてしまう。

それが溢れてしまったら、オレはもう進めない。
そんな気がした。

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