第78章 灰色の世界
「っ…リナリー、平気さ?」
「う、うん…っ」
真っ暗な闇の中。
気配でなんとか目の前にいるリナリーの体を把握して、上から被さった状態のまま声をかける。
突如起きた巨大な揺れ。
恐らく第五研究所でアレン達がAKUMAと戦り合った時の衝撃なんだろう。
辺りは一気に停電して、上から落ちてくる照明に咄嗟に目の前のリナリーを庇った。
こんだけの衝撃…一体何があったのか。
南は無事なのか。
不安は一向にオレの中から消えない。
「二人共!大丈夫!?」
そこに微かな灯りが灯される。
目を向ければ、ロウソクの燭台を手に駆けてくる婦長が見えた。
「婦長…平気、すげー揺れだったさ」
庇っていたリナリーから体を離す。
「よかった…」
「真っ暗…皆大丈夫?」
「私達は大丈夫よ。部屋は凄い有り様だけど」
心配そうに辺りを伺うリナリーに、婦長はいつもと変わらない表情であっさりと言い切った。
「婦長ぉ~、灯り持ってかないで下さいよ~!」
「いたっ!なんかで指切った!」
「ああ…薬品がグチャグチャだわ…!」
「キャー!誰ですかお尻触ったの!?」
………。
…それ、本当に大丈夫なんさ?
後ろの暗闇から、すげーガラスが割れる音とか転倒する音とか叫び声とかしてんだけど…。
ってか、
「うっそ、クロちゃん今のでも起きねぇの!?」
こんなすげー揺れと衝撃音がしたってのに。
どんだけ重症なんさ、なんか今更だけど心配なってきた。