第77章 生と死
ギリギリと首を締め上げられて、鈍い悲鳴を漏らしているリーバー班長。
「はんちょ…ッ!」
一人の力じゃ立てない。
なんとか体を引き摺って、班長の下へ向かう。
止めないと。
───どうやって?
わからないけど、どうにかして。
───助けられるの?
わからない。
でも助けなきゃ。
じゃなきゃ、皆死んでしまう。
突然の出来事に頭がパニックになる。
でも今すべきことはわかっていた。
方法なんて思いつかないけど、目の前のこの光景を止めないと。
「逃げ、ろ…ッ」
「はんちょ…!」
掠れた班長の声が耳に届く。
やめて。
その人に酷いことをしないで。
やめて…!
ズダンッ!
その思いでなんとか這いずって進めば、赤黒いAKUMAの腕は呆気なく班長の体を床に叩き付けた。
「が…ッ!」
鈍い悲鳴。
リバウンドするように跳ねた班長の体が、床に再び落ちて動かなくなる。
「は、班長…!」
嘘。
さっきのハスキンさんの姿が重なって、一気に体温が下がる気配がした。
目を瞑って動かない班長の頭から、つぅと流れ落ちる赤い液体。
嘘。
「ぃ、ゃ…」
声が震える。
「嫌…ッ」
〝死〟
頭に浮かぶ現実を心が否定する。
嫌。
嫌だ。
その人を連れていかないで。
「嫌、班長…ッ!」
体に鞭を打って、班長の下に這いずる。
なんとか伸ばした手が、その体に触れようとした。
その時。
───ニン…ゲン
声が聞こえた。
ノイズのような、人間を求める声。
「…ぁ…」
顔を上げる。
視界に映り込んだのは、赤黒い色。
私の真上に伸びている赤黒いAKUMAの腕。
ポタリと、その腕から滴り落ちる赤い液体。
誰のものかはわからないけど、此処で倒れている皆の血を被ったAKUMAの腕。
瞬間、
ドッ…!
その腕は素早く振り被って、私に考える暇も与えずに真上から振り下ろされた。