第76章 終わりの始まり
「班…長…」
「待ってろブックマン!今助ける!」
後方から呼びかけてくる弱々しいブックマンの声に、視線はAKUMAを捉えたまま応えていると。
「はっ、小癪」
目の前のAKUMAがその足で、張り上げたシールドの壁を踏みつけてきた。
バリバリと嫌な音が鳴る。
くそ、即席の結界装置じゃそう保たない…!
「連れていかせるものか!」
それはバク支部長達の装置も同じく。
南とアレンを連れ去るAKUMA達を結界で囲っていたが、状況は俺らと同じだった。
いつやられてもおかしくない。
時間の問題だ。
「起きろウォーカー!二人共拉致られるぞ!」
「アレン起きて!南が…ッ!」
気絶しているのか、動かないアレンをバク支部長とジョニーが強く呼びかける。
「起きてッ!アレェエン!!!」
ジョニーの涙声が響く。
同時に、
ド…ッ!
アレンの白いマントが、周りのAKUMA達を貫くようにして発動した。
「ガ…」
「ッぁ…?」
「グ、ふッ」
倒れるAKUMA達に、白いマントが意思あるように動いて南の体を包み込む。
どうやらジョニー達の声でアレンが目覚めてくれたらしい。
それを視界の隅に捉えて、だけど安心する暇もなく。
「小賢しい。人間風情が」
「く…ッ!」
AKUMAが踏み付けるシールドの亀裂音が、バリバリと激しさを増した。
「班長ッ駄目ですこのままじゃ…!」
「くそ…っマービン、ブックマンを助け出せ!」
「ッはい!」
この場で立ち往生していたら、周りをAKUMAに取り囲まれて結界も破かれてしまう。
とにかく人命救助が先だと、壁に埋まったブックマンの救出を急いだ。
「そんな付け焼き刃の力で抗ったって、先は見えてる。どうせお前らも死ぬんだよ」
シールド越しのAKUMAがケタケタと歯を鳴らして笑う。
言い返してやりたくても、確かにその言葉は的を得ていた。
「く、そ…ッ」
どうする。
ブックマンを救出してもこのままじゃAKUMAにやられる。
どうする…!
「「「───!」」」
その時。
目の前にいたAKUMA達の空気が、一瞬止まった。