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科学班の恋【D.Gray-man】

第76章 終わりの始まり



「ぁ…嫌、いや…タップ、嘘…ッ」



掠れて震えた声。
まるで泣いているような、そんな声。



「タップ…タップ、」



AKUMAの腕の隙間から、覚束無い南の腕が伸びる。
真っ黒な固まりと化したタップへと。
動かない、死体と化したタップへと。



「"アバタ・ウラ・マサラカト"」



そんな南に構うことなく、髑髏の手が再びタップの頭に翳される。
その口から零れ落ちていくのは、何やら呪文のようなもの。

なんだ…何してる。
タップはもう死んだはずだ。
その手で殺したはずだ。
まだ何か手を出す必要なんてあるのか。



やめろ。



「"オン・マギジバ"」

「や、めて…ッやめて…、お願い…ッ」



俺の思いに重なるように、南のか細い声が漏れる。



「やめて…ッお願…っだから…ッタップ…!」



その目からボロボロと零れ落ちていく、大粒の涙。
後から後から止まる気配のないそれは両目から溢れ出て、南の顔を濡らしていった。



それはアジア支部への任務の時と、同じだった。



薄暗いホテルのベッドの上で、幾つも大粒の涙を零して幼い子供のように泣いた南。
その姿を目の前にした時、俺の心は痛みしか感じなかった。

痛くて痛くて。
その嗚咽を漏らす小さな体を抱きしめることでしか、止められなかった胸の痛み。
それと同じものが俺の心を突き破る。



「っタップ…ッタップ…ッやめ、て…っ!」



痛い。
南の声が刃物のように胸の奥底を突いて、あのホテルで感じたものより強い痛みが走る。



「…ッ」



泣かせるな。
そんな声で、そいつを泣かせるな。

他人への思いは人一倍強い奴なんだよ。
誰かの役に立ちたいって、心からそう思って仕事してる奴なんだ。

そうやって俺の下で働いてくれていた。
優しい奴なんだよ。



「…南…ッ」



そいつの心を抉るな。

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