第13章 初任務
普段チャラけててスキンシップもよくしてくるラビだけど、おふざけであんなキスはきっとしない。
今までラビとよく一緒にいたからわかる。
普段誰にでも社交的でフットワークが軽いから、付き合いも軽く見られがちだけど…他人を思う熱い気持ちをちゃんと持ってるから。
だから。
"…ごめん"
衝動的なキスをした直後とは思えない、あのか細い声と悲痛な表情。
あれはきっとラビの本心だ。
いきなりあんなことをしたことは納得いかないけど、それだけでラビの全部を否定しようとは思わない。
…ちゃんと向き合おう。
そしたら、あの表情の意味も教えてくれるかもしれない。
そう思った。
なのに。
な の に。
「おはよーさん、南っ」
「……おはよう?」
軽い調子で、ニパッと笑って朝の挨拶をぶち込んでくる。
この兎はなんだ。
「……ラビ……あの…」
「あ、オレ次の任務でコムイに呼ばれてるんだった。じゃーな」
「え、あっちょっと!」
いつもと変わらない笑顔。
いつもと変わらない口調。
いつもと変わらない仕草。
なのに、それは有無言わさない態度だった。
「…何、あれ」
軽く手を挙げて、笑顔で去っていくラビ。
その姿を私は唖然と見送ることしかできなかった。