第73章 あくまが来た日
「班長ぉ~…」
「…ったく、」
止められないバク支部長達に、ジョニーが助けを求める声を上げる。
その声にガリガリと乱暴に髪を掻いて、リーバー班長は踵を返した。
振り返った班長のその顔は酷くやつれていて、頬もコケてる。
これはそろそろ限界かも…。
「リーバー班長、私止めて来ますからっ。班長は皆への支持を引き続きお願いしますっ」
「あ、おいっ」
咄嗟に声を上げて、班長の言葉も待たず小走りでジョニーの元へ向かう。
これ以上、支部長関連で仕事を増やしたら班長が可哀想だ。
「ジョニー!」
「あ、南?」
「バク支部長、これ以上邪魔したらリナリーに言いつけますよっ」
「な、何故邪魔になる!手伝うと言ってるだけだろうリナリーさんには言うな!」
「じゃあ邪魔しないで下さいっ!」
リナリーの名前を出した途端、顔を青くするバク支部長に詰め寄る。
このままの勢いで退散してもらおう。
「アラ。まだあんな小娘にお熱なの?バクったら」
「へー、ロリコンだね」
「ぅ、煩いぞ貴様ら!」
しみじみと呟くレニー支部長とアンドリュー支部長に、バク支部長の顔に赤いぷつぷとした蕁麻疹が───…うわ、こんな所で蕁麻疹なんて出さないで下さい!
「もー、わかりましたから。そういうのは外でやって下さいって」
騒がしい支部長達に、落ち着かせるようにジョニーが両手を突き出す。
「これはオレらの仕事なんすから~」
そう、溜息混じりに追い出そうとして。
───ブッ
その鈍い音は唐突に耳に届いた。
「………え?」
最初に声を上げたのは、ジョニーだった。
私とバク支部長とレニー支部長は、その光景に一瞬固まって動けなかった。
赤黒いつるりと曲線を描く、蛇のようにしなる太い鞭。
それがジョニーの体を貫いてるなんて、状況。
一瞬、理解できなかったから。
───え?