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科学班の恋【D.Gray-man】

第73章 あくまが来た日



「なんか…南国リゾート地ですね。正に」

「だな」



カツン、と白い煉瓦を踏んで足音が鳴る。
見上げれば真っ白な空。
空…というか高い天井になるのかな?これは。
そして真っ白い煉瓦で作られた家の数々。
まるで何処かの南国リゾート地のようなその風景に思わずそう呟けば、隣に立つリーバー班長も苦笑混じりに頭を掻いた。



今私と班長がいる場所は、"ノアの方舟"の中。
アレンが操って千年伯爵から奪ったこれは、元はノアが所有していた物。
こんな物を七千年前から作り上げていたなんて…伯爵って何者なんだろう。
凄いなぁ…。



「こんな所で一週間休みとか貰えたら、最高だろうなぁ…ちょっと迷子になってきていいですか」

「気持ちはわかる。わかるが今は仕事中だ。現実に戻ってこい、南」



思わず明後日の方向を見ながら呟けば、目の前でひらひらと班長の手が振られた。

空間転移能力を持つこの方舟は私達普通の人間には、かなりの未知数な代物。
その能力や他に扱える力がないか、アレン達が方舟で帰ってきた日から科学班総動員で調べ続けていた。
お陰で毎日残業。
徹夜だって当たり前。

私の顔はラビに心配されるくらいやつれてたみたいだけど、班長はもっと凄い。
平研究員の私より、班長の仕事は沢山あるからなぁ…。
…そして何より班長が疲れている原因は、恐らく。



「ほっほう。全く素晴らしい品物だな、この方舟は」

「バク様、足元お気を付けて!」

「うむ」



私と班長しかいないはずの方舟の中に、何故か教団本部では見かけないはずの金髪の男性が一人。
…と、お供して付いてる補佐役のご老人も一人。



「書物に記されたものとは大分違うが…このゲートというものに入ると方舟の中に瞬時に移動でき、また此処から瞬時に別の場所に移動できるのだな!素晴らしい!」

「そうでございますね、バク様!」

「「………」」



意気揚々と辺りを観察しながら声を上げるその人───…バク支部長と、高々とこれまた声を上げて賛同するウォンさんに、私達は無言で肩を落とした。

そう、この人達が興味本位で方舟見学にやってくるから。
すっかりその相手というか邪魔をさせられている班長は、目の下の隈が酷い有り様になっていた。

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