第72章 欲しいもの
もぞもぞと布団から顔を出す。
未だにクロちゃんの腹の騒音とユウの怒りを含んだ罵声が聞こえて、ほっとした。
この隙に南を帰すか。
「ほら南、目ぇ覚ませって。ちゃんと自分の部屋戻って寝ろよ?」
「いきなり布団に引き摺り込んでおいて、よく言う…」
眠たそうな目を擦りながら同じに布団からこっそり顔を出す南に、つい苦笑した。
そこはオレが悪かったです。
「そこのエクソシストと仕事中毒者」
気配は全くなかった。
「だぁ~れが、こんな所で不純異性交遊を許したのかしらねぇ?」
思わずゾクリとその声の冷たさに背筋を凍らせる。
「「………」」
恐る恐る、南と顔を青くして振り返れば。
其処には。
「ふ…婦長……こ、これは違うんさ…」
「す、すみませ…っ」
鬼のような角を頭から生やした(ように見えた)婦長がいた。
「貴方達、退院するまで此処での交流は一切禁じます!!!!!」
え、嘘。
いやいやいや…え、嘘ちょっと待って。
いやちょっとまじでそれだけは勘弁して婦長!