第12章 記憶に焼き付く
…え、何。
何何、何これ何が起こってんの。
「大丈夫、だから…」
私を腕の中で抱きしめて、ぽんぽんと頭を撫でる大きな手。
班長…もしかして、まだ寝惚けてる…?
「は、班長…っ起きて下さい…っ」
私の心臓に悪いから…!
すぐ傍にあるリーバー班長の顔に、すっぽりと私の体を包む大きな腕。
顔が熱くなって胸がドキドキと高鳴る。
コムイ室長に抱き付かれても、こんなドキドキなんてしなかったのに。
と言うかこんな状態を出勤してきたジョニー達にもし見られたら…!
「だから…泣くな…」
…え?
「…泣く?」
ぽろりと零れた班長の言葉に引っ掛かって、思わず復唱。
「泣く…な…」
相変わらずの寝惚けた口調だったけど。
親身に伝えてくるその言葉は、昨夜頭を撫でてくれたリーバー班長と重なった。
「…もしかして、」
慰めて、くれてるのかな…。
「……班長…」
あの時の温かい肌を思い出して、じんと胸が熱くなる。
上手く隠せず変に心配をかけてしまったのに。
無理には聞いてこない班長らしい優しさと、それでも傍についていてくれるその安心感に。
ああ、やっぱり私にとってこの人は特別なんだ。
そう実感して胸は熱くなった。
…なのに。
「………」
目の前にいるのはリーバー班長。
感じる温もりも彼のものなのに。
なんでだろう。
"…ごめん"
あの時見たラビの表情が…何故か頭から、離れなかった。