第12章 記憶に焼き付く
ラビに部屋から閉め出された時、本当はすぐに声をかけようとした。
"ダンッ!"
だけど扉の向こうから聞こえた強い強打音に、体はビクついて動けなかった。
普段スキンシップの多いラビだけど、あんなふうに有無言わさない力で私に触れたことなんてなかったから。
男性なんだっていう意識と、急なキスと…色んなものがごっちゃになって。
だからリーバー班長に腕を掴まれただけで、情けなくもまたビクついてしまった。
ラビとのことを思い出して。
リーバー班長の手は大きくて、背丈もラビと同じに高い。
なのに…私に触れるそれは優しくて、温かくて。
気付いたら体の震えは止まっていた。
「…ん」
薄らと目覚める頭。
カーテンの隙間から、まだ少し薄暗い朝日が差し込んでいる。
あ…もう朝なんだ。
「ん~…何時…」
もそもそと腕時計を確認すれば、朝方6時。
悲しいかな、寝不足でも体内時計はきっちり毎日の起床時間を覚えているらしい。
「ふぁ…班長、まだ仕事してるのかな…」
欠伸を漏らしながら研究室を覗く。
まだ他の研究員は出勤して来ないから、静かな職場。
その職場全体が見渡せる班長の席に、彼はいた。
「…あ」
机に伏せて。
「………班長?」
そっと近付いて、顔を覗き込む。
…寝てる。
珍しいな、班長が職場で寝落ちちゃうなんて。
ってことは…
「うわ、凄い」
やっぱり。
机に積み重なった書類をパラパラと捲れば、全て完璧に計算が終わっていた。
相変わらず惚れ惚れする腕だなぁ…。