• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第70章 その言葉を交わすために



無茶をやろうと思った訳じゃない。
ブックマンって立場がある以上、ログ関係で命を落とすなんてやっちゃいけねぇことだ。
本来なら、咎められなきゃなんねぇこと。



「よぐわかんねーよ…気付いたら火ィ付けてた…」



でも。

すぅ、と息を吸う。
焼けた喉はひりひりと痛い。
それはこの体が生きている"証"だ。



「ジジイにゃ怒られるだろうけど…今は少し気分がいい…」



一歩間違えれば、恐らくこの命はなかった。
ジジイがこの場にいたら、絶対に怒られただろうな。

でも今はそれでもいい。

だってオレは生きてるんさ。
こうして息を吸って、痛みを感じて、笑っていられる。

南への想いも、こうして抱えられたまま。
オレは生きている。



「…はは…」



そう思うと、色んなことで悩んでいた自分がちっぽけに感じた。

現実、無視できない問題は色々ある。
オレのブックマンとしての立場が変わった訳じゃねぇし、ジジイにゃやっぱり怒られるだろうし。

それでも、



「帰んねぇとな…アレンに南はやれねぇさ」

「………なんだ。聞こえてたんですね、ちゃんと」



今は"帰りたい"と思える場所がある。
"ただいま"と伝えたい人がいる。
真っ直ぐな笑顔で"おかえり"と言ってくれる人がいる。
オレを、待っていてくれる人がいる。

それだけでいいと思えたんだ。

この想いを抱えた自分を、初めてどこか誇らしいと思えたから。
だから今は、それだけでいい。



それだけで

オレはきっと、"オレ自身"でいられる。









/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp