第68章 呼ぶ
抗えるだけ抗って、それでも駄目だった時はまだそんな自分を少しは認められるかもしれないけど。
その抗う力さえ、私にはないから。
誰かが傷付くのを、黙って見ていることしかできない。
「……だめだ、あたままわらない…」
どうにも落ちていくばかりの思考に、溜息が零れる。
「とにかく、しごとしよ…」
仕事に没頭していれば、余計なことを考えなくて済む。
…余計なことじゃないけど、でも。
今は、嫌な方向にしか思考は向かわなさそうだから。
「………」
帰ってきたら、ちゃんと"おかえり"って言うよ。
私にできる精一杯の笑顔で。
それが私にできる、唯一のことだから。
だからその時は───
ちゃんと"ただいま"って言ってよね。
───ラビ、