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科学班の恋【D.Gray-man】

第65章 肌に触れる



痛い姿だった



嗚咽と涙を零しながら、俺の胸に顔を押し付けて泣く南の姿は

本当にその姿通りの小さな子供のように、幼くて儚い存在に見えた



痛い声だった



南が嗚咽を漏らして、心の声をぶちまけて

その辿々しくてよくは聞き取れない言葉全部が、俺の胸に突き刺さった

怖かったと、声を震わせて

ごめんなさいと、謝罪して

ぼろぼろと涙を零しながら、言葉を吐くその姿は

俺の心をどうしようもなく締め付けた



痛い心だった



痛くて、痛くて

その小さな体を抱きしめることでしか、止められない胸の痛み

南の為というよりも、俺の為に抱きしめたその体は

そんな俺に縋り付いて、頼ってくれた






























「……南…?」



どれくらいそうしていたのか。
ぐすぐすと零れていた嗚咽が、やがてすんすんと小さな泣き声に変わる。
それも聞こえなくなった頃合いを見計らって、そっと声をかけた。
脱いで被せていたスーツにすっぽりと包まれた、腕の中の存在を伺う。



「…す…ぅ…」



泣き疲れたのか、寝不足が祟ったのか、安心してくれたのか。
俺の腕の中で、その小さな存在は微かな寝息を立てていた。
目元を赤くして、まだその頬に涙の跡をいくつも残したまま。



「…ごめんな…」



そんな姿にさせてしまったのは他でもない俺だ。
それを思うと、酷く胸の奥が痛む。
痛むのに…同時に、安心する気持ちも混じっていた。

ずっと南はこんな姿を心の奥に隠していたんだ。

その姿を俺に見せて、吐き出してくれたのかと思うと。
…少しは俺にも頼ってくれたのかと思えて。

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