第64章 心に触れる
夢を見た
でも夢じゃなかった
───今度はどう?気持ちいい?
私の体なのに、私よりその体を知っているかのように
大きな浅黒い手が肌の上を這う
───ほら、体ピクピクしてる
───可愛い反応
どんなに抗ってもビクともしない
薄い笑みを口元に張り付けたまま、体を弄ばれる感覚
───大丈夫、可笑しなことじゃないよ
───気持ち良いことに素直に体が感じるのは、人として当たり前のことだから
やめて
私は気持ちよくなんてない
悪寒しか感じないのに
知ったように言わないで
───到底、子供じゃしない顔してるよ
───今の南ちゃん
やめて
見ないで
そんなことない
そんなことないから
───えっろい顔
そんな顔してない…!
「───っは…!」
ひゅっと息が鳴る。
目を見開いて映ったのは暗い部屋で、一瞬そこが何処かわからなかった。
「ぁ…ぇ…?」
辺りを見渡す。
知らない部屋。
何処、此処。
「っ…は……ぁ、」
…そうだ。
私、確か…アジア支部に向かう任務の途中で…
それで、リーバー班長達とホテルに泊まって…
「…っ」
此処は船の中じゃない。
ほら、だって床が揺れてない。
こんな大きなベッドもなかった。
───大丈夫
ぎゅっと手を握り締める。
びっしょりと掻いた冷や汗は気持ち悪かったけど、それより先にその震えを抑える方を先決した。
「はー…っ」
握った拳を額に当てて、深く息をする。
何度も、何度も。
そうすれば、ほら。
段々と落ち着いてきた。
「………」
ゆっくりと体を起こす。
もう一度部屋を見渡してみる。
やっぱり、其処は見慣れないホテルの一室。
確か、神田と一緒に借りた部屋だ。