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科学班の恋【D.Gray-man】

第10章 くちづけ



南に触れようとした手を、ぐっと拳に変えて握りしめる。



「…これでわかったろ。男なんて所詮、こんなもんさ。南は危機感が足りなさ過ぎ」

「わ…っ」



もう一度南の手首を掴んで、有無言わさず体を引っ張り起こす。
そのまま追いやるように部屋の外に閉め出した。

これ以上オレを怖がる南を見ていたくなくて。
それ以上にこんなオレを見ていてほしくなくて。



「ラ、ビ…っ」

「もう来んなよ」



ドアを閉める瞬間、南の顔が振り返った気がした。
けれど真正面から見る勇気はオレにはなかった。

バタン、と閉じる無情なドアの音。



「………」



締め切ったドアに額を押し付ける。

なんでこんなことになった。

南がリーバーと二人きりでいたから?
リーバーのことを話す南の表情が気に入らなかったから?
オレのことを南が男として意識していなかったから?

理由なんてわからない。
…でもきっと全部だ。



「ちくしょ…」



オレだって男だ。
叶わないなんてわかってても、自分のものにしたくなる。
リーバーしか見ていないその目を、自分に向けさせたくなる。

でもあんな怯えた顔をさせたい訳じゃなかった。



「畜生…っ」



行き場のない感情を吐き出すように、力任せに目の前のドアに拳を叩き付ける。



ダンッ!



強い音が響いて、じんわりと拳に痛みが伝わる。
痛みに慣れた体は大したダメージもない。
そんな自分の体さえも苛立って、もう一度強くドアに拳を叩き付けた。

痛みと共に麻痺すればいい。
この想いも、この心も。
そうすればこんな思いしなくて済む。



全部、丸ごと

消えてなくなればいいのに。









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