第10章 くちづけ
「やめ…ッ、んん…っ」
否定しようとする声。
それを聞きたくなくて、息継ぎもさせまいと角度を変えて南の唇を何度も貪った。
「んぅっ…ふッ…!」
くぐもった苦しそうな声。
押し返そうともがく体が力を失くしていく。
それでも尚、その小さな肩をシーツに押し付けたまま咥内を好き勝手にオレの舌で犯した。
戸惑う舌を追いかけて、絡め取って、唾液まで飲み込むように味わう。
何度も小さな口を覆うように塞いで吸い付くと、力を失くした体が小刻みに震え始めた。
…これ以上やったら歯止めが利かなくなる。
その間際で、やっとオレは南の唇を解放した。
「っは…ッはぁ…ッ」
顔を離して見下ろすと、南の口は精一杯空気を取り込むように荒く息切れていた。
じんわりと涙で滲んだ目で、戸惑いながらオレを見上げてくる。
そんな南の表情にさえ欲情してしまう自分がいたけど、それ以上に後悔の念が押し寄せた。
嗚呼、やってしまった。
この想いを伝える気はなかったのに。
こんな最悪な形で暴露してしまうなんて。
「…ごめん」
掴んでいた手首と押さえていた肩を離す。
酸欠状態の南を伺うように、頬に手を伸ばして。
「っ」
その手を目に映した途端、南の目が恐怖に似た色を称えてオレを見た。
瞬間、強い罪悪感と共に居た堪れなくなった。