第60章 隠れんぼ
「今回は予想外の展開になっちゃったけど、今度はボクと二人だけで遊ぼうね」
「…いやです」
「え~、そんなこと言わないで~」
口を尖らせて駄々を捏ねる姿は、子供のようで可愛らしくも見える。
だけどそんな可愛いだけの子供じゃないことは充分に理解しているから、とても首を縦には振れなかった。
二度と嫌です、こんな命懸けのゲーム。
「ぶぅ…いいもん。別の"遊び"がまだあるし。ティッキー、帰るよ。千年公に呼ばれてるから」
「…ってことだから。この続きはまた今度な」
ロードの呼びかけに、笑顔で泣き黒子のノアが後方に下がる。
まるで見計らったかのように、後方に下がるその場に床から競り上がってきたのはハート型のゴシック調の扉。
「っ待ちやがれ!」
後を追う神田より早く、左右に開いた扉の中にそのノアが背中から入り込む。
「じゃね、南ちゃん。割と楽しかったよ」
まるで吸い込まれるように扉に消えていく瞬間、その金色の目は私に向いてにこりと笑った。
目が合わさって、体に走ったのは悪寒。
私は全然、楽しくもなんともない。
ひたすらに恐怖を感じる時間でしかなかったから。
「ばいば~い★」
同じく吸い込まれるように、扉の向こうの暗い空間に消えていくロード。
ひらひらと片手を振りながら、愛嬌たっぷりの笑みを見せて。
そしてパタンと呆気無く、ハート型の扉は閉じられた。