第60章 隠れんぼ
『くそッ開かない…っ!』
ガチャガチャとドアの向こうから何度も取っ手が回される。
悪態をつくその声は、聞き間違えるはずもない。
リーバー班長のものだ。
あの鍵の掛かったドアの向こうに、リーバー班長がいる。
「リーバーはんちょう…!」
そう悟ると同時に、叫んでいた。
「います!ここにわたし…ッ!」
「あらら…余計な邪魔が入りそうだな」
そんな中、ノアは私を押さえ付けたまま退く気配もなく飄々と余裕な態度。
「でも無駄だよ。俺達がいるのはロードの"夢"側だから。あっちに声は届かない」
「え…っ?」
ロードの夢?
意味はわからないけど、なんとなく察しが付いた。
私が周りの人に見えなくなってたのは、その夢側に入ってしまっていたから?
…本当に別次元に飛ばされていたなんて。
そんな空間を歪ませる程の能力を持つ、AKUMAがいたなんて。
どれ程のレベルなんだろう。
『本当に此処か』
『ああ、ゴーレムがあの窓から入っていくのを見た』
『…退いてろ』
ドアの向こうから聞こえた声は、リーバー班長だけのものじゃなかった。
低い声が静かに耳に届いたような、そんな気がしたと思ったら。
───ピシッ
ドアとその周りの壁一体に、亀裂が走る。
「げっ」
一気に複数の線の亀裂が入ったかと思えば、ドシャ…!とドアごと一気に崩れ落ちる壁。
それを見たノアが嫌そうに声を上げた。
ガラガラと瓦礫と化した壁とドアの破片が、崩れ落ちていく。
「南…!」
その向こうから部屋の中に駆け込んで来たのは、やっぱり。
「はんちょう…ッ!」
リーバー班長だ…っ
「南!何処だ…っ!?」
「…いねぇな」
リーバー班長の後に続いて、中に踏み込んできたのは神田だった。
その手には鞘から抜いた六幻。
きっとその六幻で斬り付けて、ドアを壊してくれたんだろう。
………。
だ、大丈夫かな…六幻、壊れたりしてないかな…。
「て、ちがうっ」
今、重要なのはそこじゃないから私っ