第58章 ゲームルール
「そっちはいたか?」
「いや、いない」
「ジジはっ?」
「同じく、何処にもいやしないな」
神田から逸れた南のことを聞いた後、急いでバラバラに皆で辺りを捜し回った。
だけどその小さな体は、何処にも見当たらない。
「落ち着けって、リーバー。此処は船ん中だから、消えることはないはずだし。南も子供じゃねぇんだから、そのうちひょっこり戻ってくるって」
「子供じゃないから、逆に勝手にいなくなるなんてことないはずだろっ」
ジジの忠告も今はあまり響かない。
お前みたいに好き勝手する奴じゃないんだよ、南は。
「何処かで怪我でもして、動けなくなってたりしたらどうするんだよ」
中身は大人でも、今の南は小さな子供。
そんな嫌な予感も振り払えなくて、不安は更に募る。
「とにかく俺は船の後方も捜しに行くから。ジジは南が戻ってきた時の為に、部屋で待機頼む」
「はぁ…わかったよ。神田は?」
「俺も行く。あいつの消え方は不自然過ぎる」
長く教団でエクソシストとして務めている神田は、その実力も高い。
それが勘のようなものでも、俺には充分耳を傾けるだけの信憑性はあった。
クソ…何処に消えたんだ、南は。
「って、待て待て神田。何しれっと六幻持って行こうとしてんだよっ」
慌てて呼び止めるジジに目を向ければ、神田のその背には六幻が入った布袋が掛けられていた。
ちらりと黒い目をジジに向けると、神田は一言だけ。
「…念の為だ」
アレンはいないから、この場でAKUMAの有無なんて確認することはできない。
だからなのか、断言はできないけれど。
そんな神田を止めることはできなかった。
もしかしたら。
そんな嫌な予感が、どうしても拭い去れなかったから。