第1章 私の好きなひと。
「リーバー班長、いつもコーラだから。偶には私のコーヒーも飲んでね」
「はは、リナリーの淹れてくれたコーヒーは美味いからな。ありがたく頂くよ」
笑顔で話すリナリーに楽しそうに笑うリーバー班長。
年齢差なんて関係なく、あんな二人を見ているとなんだか少し悲しくなる。
「………」
無言でずずっとコーヒーを啜って、二人から視線を外す。
化粧もお洒落もしなくても、自然と可憐さが溢れているリナリー。
性格だって、いつも教団の皆のことを考えてくれていて、そしてエクソシストとして守ろうとしてくれていて。
優しくて、それでいて強い女の子。
そんなリナリーとずっと一緒だったんだから。
後から入ってきた一職員の私なんて、リーバー班長の目には入らないよね…。
職場じゃ忙しくって、化粧なんてろくにしてないし。
周りは男性ばっかりだしラビとかよく構ってくるから、つい乱暴な口調になっちゃうし。
大体こんなこと考えてる時点で捻くれてる。
想いを伝えようなんて気は、今のところ全くないんだけど…でも…ねぇ、やっぱり…。
嫌、だなぁ…。
班長があんなふうに他の女の子と楽しげに笑ってるのって。
「あーあ…」
年下の女の子に嫉妬だなんて。
両手に持つマグカップ。
その中の黒い水面にゆらゆらと揺れる映し出された自分の顔を見て、溜息一つ。
私って、リナリーに比べて大した見た目じゃないけれど。
中身もほんと、醜いや。