第55章 ゲーム開始
思わず振り返った目の前には、淡い色のロングスカート。
視線を上に上げて見えたのは───…あ。
「アラ。貴女、オ昼ニ会ッタ…?」
昼間カフェテラスで班長と話していた、あの物腰柔らかい綺麗な女性だった。
と、いうか。
「わ…わたしのこと、みえてます…っ?」
今、私に声かけてくれたよね!?
傍から聞いたら変な問いだけど、今の私にはこの人が救世主に見えた。
「見エテル?…エエ、見エテルワヨ。チャント」
きょとんと瞬いた目は、可笑しそうにクスクスと笑う。
それでも小さな子供を相手にするように、きちんと応えてくれた。
イジメてこない人、発見…!
「ドウシタノ、コンナ所デ一人。ウェンハムサン達ハ?」
「それが、その…えと…はぐれちゃった、みたいで…」
「マァ、ソウナノ?」
屈んで親切に問いかけてくれるその人には悪いけど、咄嗟に嘘をつく。
実は周りから盛大な無視を受けてるんです、なんて言えないし。
ごめんなさい。
「へやにもどりたいんですけど、かえりみちがわからなくて…」
「ソノ部屋ノ番号、ワカル?ワカルナラ、連レテ行ッテアゲラレルカラ」
「ほんとうですかっ」
思わず喰い付けば、クスクスとその人は綺麗に笑って頷いた。
「困ッタ時ハ、オ互イ様デショウ?」
どうしよう、この人がまるで女神に見える。
ありがとうございます…!
「ソウイエバマダ、オ名前聞イテナカッタワネ。私、マリアッテイウノ。貴女ハ?」
「みなみです」
「南チャンネ。ヨロシク」
優しい笑みを浮かべるその人は、名前まで女神様でした。