第55章 ゲーム開始
「…ぅ…」
薄らと目を開く。
辺りは薄暗く、一瞬其処が何処だかわからなかった。
「…あれ」
体に重みや痛みなんかはない。
意識が戻ると、すぐに頭は覚醒した。
「っ!」
慌てて辺りを見渡す。
其処は最後にぐにゃぐにゃと景気が歪んでいた、あの甲板だった。
「…ロード?」
最後に見た、あの少女の姿だけ消して。
甲板の床、柵、薄暗い照明。
他は何も変わらない。
「…ゆめ?」
あの歪んだ景色はなんだったのか。
頬を抓ってみれば、地味に痛い。
これは現実みたいだけど…船が大波にでも揺れて、あんなぐにゃぐにゃに見えたのかな。
「…とりあえず、そういうことにしておこう」
考えても答えは出なさそうだから、そう適当に結論付けた。
ロードがいないだけで、周りは何も変わらない景色だし。
…ロードがいないだけで。
「…まさか、あそびはじまったりしてないよね…?」
ロードの言葉を思い出す。
鬼ごっこと隠れんぼって言ってたけど…。
確か鬼に捕まったら負けで、隠れているロードを見つけたら勝ちって…。
まさか、此処から私が見つけなきゃいけないとか?
ロードを?
「きょうせいさんかですか…」
誰もいない、薄暗い甲板の上。
私の声に反応する者は一人もいなかった。