第52章 1/1元旦(番外編)
「………」
「………」
無言の問答が続くこと、数秒。
その空気に耐え切れなくなるかと思いきや。
「…ま、いいけど。この美女好き兎ー」
「へっ?なんさ急に!?」
黙り込んでいたら、それが答えだとでも思ったのか。
むすっとした声が聞こえたかと思えば、変なこと言って逃げるように神社の敷地の外に駆けてく南。
慌てて目で追えば、ちらりと振り返った顔が拗ねたように。
「…ラビのばーか」
それだけ言って、そっぽを向いてしまった。
…なんさそれ。
「えー…」
普段オレにそんな、負の感情で子供っぽい態度なんて見せたことなんてない。
珍しいっていうよりも、なんていうか…
「そういう可愛いことすんなさ…」
あんまり煽らないで下さい。
初夢だけでもヤバかったのに。
「…オレ、もうちょっと大人になろう」
リーバーに比べてまだまだガキなところは認めるけど。
そんなオレでも、南は見てくれてるからいいやって思えたけど。
色んな意味で、もっと精神力鍛えようと思いました。
とりあえず、あんな夢見て射精しないくらい──…はい、ごめんなさい。
「待てって、南っ」
顔の熱を払うように、声を上げて南の後を追う。
拗ねた顔で振り返りながら、それでも南はオレを待つように足を止めてくれた。
初夢の中で南から愛の言葉を聞いた時と同じ。
そんな姿に、どうしようもなく満たされるような気がした。
「…やっぱ明日から大人になろ」
追いかけながら、思わずぼそりと声に出す。
一時決意は中断。
ごめんオレ。
とりあえず美女夢は誤解だって説いて、それから一回くらいは抱きしめてもいいかな。
だって、そんな一挙一動に浮足立つくらい。
だって、あんな夢を詳細に見ちまうくらい。
オレ、南に夢中なんです。
A HAPPY NEW YEAR!