第48章 おやすみの、
「…ん、」
南の吐息が顔に触れる。
その距離の近さに、視界に映る南の顔の輪郭もぼやける。
唇に触れるのは、同じく俺の───
「っ待て待て待て」
いや待て俺、今何しようとした。
何しようとした犯罪か。
それ犯罪か。
いくら好きな相手でも寝込み襲うとか、ましてや相手は外見子供だろ…!
「…どんだけ欲求不満なんだよ…」
咄嗟に離した顔は、ギリギリ南の唇に触れることなく。
思わず床に両手を付いて自己嫌悪。
……俺、ロリコンじゃねぇから。
「………南限定だ、くそ…」
ロリコンじゃないけど南相手だと強く言い切れる自信がなくて、言い訳がましく自分に悪態をつく。
「すー…」
ちらりと見た南は自分の危機なんて露知らず、すやすやと気持ち良さそうに眠っていた。
…こんな小さな子供に振り回されてる自分が、少しだけ悲しくなる。
「…これだけ許せよ」
その気持ちに見切りを付けるように、もう一度顔を寄せる。
触れたのは、小さなその額。
微かに触れるだけの、ささやかなキス。
「………」
アジアはそうじゃないらしいが、こちらの習慣でハグやキスなんて家族間でなら当たり前によくやる。
俺の家庭だってそうだった。
幼い頃、寝る前に親が額にキスをくれることなんて日常的なもの。
それに習って、つい出た行動かもしれない。
「……駄目だ」
でもそれはどうやら、ただ想いの再確認をさせられただけだった。
どんなに子供の姿でも、俺に南は南のまま。
悪い、南。
額のキスなら…カウントには入らねぇだろ。
……多分。