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科学班の恋【D.Gray-man】

第47章 可愛い貴方



その日は列車を乗り継いで、そのまま列車に寝泊まりすることになった。
夜の森の中を走る夜行列車。
二段ベッドが二つ並んだような形式で四人。
狭い空間の個人車両の中。



「……何やってんだ、リーバー」

「何って、どう見ても仕事だろ」

「仕事中毒にも程があんだろ」

「そうか?」



唖然と呟くジジさんと、呆れた顔をした神田が見る先。
其処にはベッドの間にある窓際に腰を落ち着かせて、大量の化学式の計算表を処理するリーバー班長がいた。

…なんだか二人の視線がデジャヴ。
これ、私が任務帰りにラビとアレンに向けられた視線に似ているような…。
……ラビ達の気持ちが、今わかった。
本当にこれじゃ仕事中毒者だ。



「…はんちょう。わたしにてつだえることは、ありませんか?」



流石に止めて下さいとは言えず、おずおずと提案する。



「ああ、大丈夫だ。これは南じゃ専門外だからな。気持ちだけありがたく受け取っとく」



計算表から顔を上げた班長が、優しく笑う。
仕事時にしか付けない眼鏡姿は、仕事に取り組むその姿勢を表していた。

…駄目だ、これじゃ。
折角少しは休んでもらえるかと思ったのに。



「ま、止めねぇけどよ。俺は寝るぞ」

「ああ、ちゃんと降りる時間には自分で起きる」

「じゃ、オヤスミー」

「おやすみ」



さっさと上のベッドに潜り込んだジジさんが、仕切りのカーテンを締める。
班長のことだから、ちゃんと寝坊したりはしないようにするんだろうけど…少しは、体を休めて欲しいのに。



「南と神田も寝ろよ?」

「言われなくても、そうする」



同じように向かいの上のベッドに消える神田を確認して、残ったのは私一人。



「………」

「…南?寝ないのか?」

「……あまり、ねむたくなくて」



仕事の手伝いができない私は、邪魔でしかないだろうけど。
一人班長を残して寝ることが、なんだかできなかった。



「コーヒーとか、かってきましょうか」

「はは、いいよ。今の南の体じゃ、疲れもすぐ溜まるだろ。遠慮なく寝とけ」



伸びた大きな手が、くしゃりと一度だけ優しく頭を撫でてくる。

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