第6章 俺の職場。
「でも中身の引き継ぎが───…って、ちょっと!」
「いいって。中のデータなら、前の任務で全部コムイに渡したし。じゃな、」
南のゴーレムを貰った途端、あっさりと引き下がる。
「…ラビ。データの引き継ぎはしとけよ。戦場で不具合が出たら困るだろ」
「大丈夫さ。そんくらいで死ぬようなタマじゃねぇし」
そんな去り際のラビに声をかける。
これは科学班としての忠告。
なのに。
「それに…ちゃんと、大事にすっから」
ゴーレムを口元に当てて笑った、ラビの一瞬の表情。
俺にしか見えなかったそれは、よくラビが見せる砕けた笑みじゃなかった。
どこか好戦的な、戦場で見せるような笑み。
それはゴーレムのことじゃなく、まるで南自身に向けた言葉のように思えて俺は眉を潜めた。
なんで俺にそういうことを言うんだ。
俺が南の上司だからか?
…俺はあいつの身内じゃないぞ。
「…何やってんだ、俺は」
結局それ以上何も言えないまま、ラビを黙って見送る結果となった。
そうして誰にも見えないところでこっそり溜息をつく。
相手は未成年の青年なのに。
いちいち反応し過ぎだろ…俺は。
大人げない。