第45章 好きの理由
「いいよなー、任務内容が中国旅行なんて」
「あそびじゃないから。しごとです」
「あっちの中華って美味いし」
「ジェリーさんのちゅうかりょうりだって、おいしいよ」
「生パンダも見られるだろ」
「みぢかに、いだいなパンダさんがいるでしょ」
………。
「…それまさか、ブックマンのジジイのこと言ってるんさ?」
すみません、言い過ぎました。
ブックマンごめんなさい。
と、いうか。
「…あの」
「なんさ?」
「じゃま、なんですが」
自室のベッドの上に荷物を広げて、持っていく物を選別して任務の荷造りをしている最中。
その声は向かいや背後から聞こえる訳じゃなく、私の真上から。
「邪魔してねぇだろ?ほら、パジャマ」
「ああうん、ありがと…ってなんできぐるみ!」
「似合うかと思って。リナリーが用意してくれたんさ」
つい受け取ったそれは、可愛らしい猫耳フード付き着ぐるみパジャマ。
出たよ、とうとう獣耳フード。
恐ろしくて反射的に放り投げてしまった。
「じゃなくて、じゃまなんですがっ」
再度、睨むように見上げる。
ぐっと首を逸らせば、視界に赤い髪が見えた。
私が座ってるのはベッドの上だけどシーツの上ではなく、胡座を掻いた長い足の間。
緩く体に回された大きな腕は、触れてはいないけど動きを制限するには充分で…まるで小さな子供のように、すっぽりラビに囲われてる状態。
見た目は子供だけど、中身は子供じゃないんです。
色々と恥ずかしい格好だから、これ。
「だってさ、オレ堪能してねんだもん。ユウだけ狡いさ」
「ずるくないし、これはたんのうじゃない」
はぁ~っと溜息混じりに、ラビの顎が私の頭に乗る。
重い。
リーバー班長に泥酔混じりに抱きしめられた時は、余裕なんてなかったけど。
ラビのこの雰囲気に、変な空気になるはずもなく。
「折角こんな面白い姿の南がいんのに。アジア支部に旅行なんてさー」
「ちょ…っ」
ぎゅうっと、大きな腕が後ろから抱きしめてくる。
面白いって何、面白いって。
いつもよりスキンシップ過度だから。
完全に子供扱いしてるでしょ…!