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科学班の恋【D.Gray-man】

第39章 非遺伝的変異



「はぁ…終わった」



多少残業したものの、徹夜にはならずに済んだ。
ほっとしながら顔の横に纏わり付く髪を掻き上げる。
仕事中に髪を解いたことなんてなかったから、なんだか違和感。



「お疲れ、南。片想い頑張れよー」

「…そのネタ、引っ張り過ぎです」



ぽんっと軽く肩を叩きながら、笑顔で去るマービンさんをジト目で返す。
本当、此処はネタさえあれば盛大にからかう人ばかり。
今回の原因であるリーバー班長も、流石に悪いと思ったのか。
あの後、色々と仕事を取られた。
お陰でそんなに残業せずに済んだけど…。



「…片想い、ね」



デスクに頬杖付いたまま、ぽつりと零す。

確かに私は片想いをした。
この同じ職場の、上司である彼に。
だから綺麗だなんて真剣な表情で言われて、赤くなる顔を隠すこともできずに、胸はきゅっと締め付けられた。

あの人の言葉は、一つ一つ私には大きくて。
同様にその存在も大きい。

…でも。



「………」



ラビと、約束した。
このもやもやとした気持ちの名前を見つけるから。
それまで待ってて、と。
その感情の答えは未だに見つかっていないけど、それが見つからない限り…片想いの気持ちは、定まらない気がする。

大事なことだから、誰が好きだなんて簡単に言っちゃいけない気がして。
きちんと答えを出さなきゃ、リーバー班長とも向き合えない。
そんな気がした。



「…まぁ、元から伝える気はないけど…」



リーバー班長への想いが確かなものだったとしても、それを告げる気は元からない。
こうして部下の一人である私に目を掛けてくれて、同じ科学班としての大変さも理解して認めてくれた。

本当に嬉しかった。
…幸せだなって思った。

この、どこかくすぐったくて優しい関係を壊したくない。
元よりこの職場で、愛だの恋だの言ってられない。
そう考えていたし。



「───なんて」



思わず乾いた笑みが浮かぶ。
さっきから浮かぶ自分の思考は、まるで言い訳ばかりしているようだったから。

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