第37章 宴のあとに‐A.W‐
それぞれで好きな場所に、寝床を確保する。
つっても椅子や床にはごろごろ、潰れた科学班の連中が転がってる訳で。
部屋の仕切りに背を付けて、座って寝るのが精一杯だった。
「こんなことに付き合ってくれるなんて、アレン達は優しいなぁ」
「普通ですよ」
「そう言っちゃうところがね。優しいんだよ」
「そうですか?」
仕切りに凭れて、ジョニーとアレンの会話を耳にしながらふと横を見る。
すると同じように毛布で体を包んで仕切りに凭れる形で、寝る準備は万端という様なのに何故かその眉間に皺寄せる南がいた。
「どしたんさ」
「え?」
「眉間の皺」
そこを指差して問えば、アルコールで未だ赤い顔が向く。
そしてどことなく元気のない笑みを浮かべた。
「あ…うん。ちょっと、頭痛がしてて…飲み過ぎたみたい」
「どんだけ飲んだんさ」
「いやー、クロス元帥とお酒交えちゃ駄目だよね」
苦笑混じりの笑顔を見返す。
ってことは、あの元帥と酒酌み交わしたんか。
…あの人、ザルだからな。
「でもよく、あの元帥相手で酔い潰れなかったな」
「元帥、良い人だったよ。なんだかんだ晩酌も楽しかったし」
そう笑う南の言葉は本心なんだろうけど。
それに黙ってられない人物が、此処には一人いるわけで。
「師匠が良い人…?南さん、それ騙されてます」
顔を青くして、話に入り込んできたのはアレン。
まぁ、そうだよな。
「セクハラ受けませんでした?無駄に触られたりとかは?変なお酒飲まされたり…っ」
「お、落ち着いてアレン。何もなかったよ、お酌を頼まれただけで…」
「そうやって近付いて、ちゃっかり自分のものにしちゃうんですよ。あの人はっ」
がしりと、アレンの手が南の両肩を掴む。
過去にも経験済みなのか、その顔は切羽詰っていた。
「優しい言葉に絆されちゃ駄目ですッ。紳士面した、ただの女好きですからッ」
…その"紳士面"ってのは、アレンも同じだけどな。