第34章 みんなの宴
「ゴーレムの備品確認と、修理過程の報告書。あと、この薬品サンプルの数値化。頼むわ」
「…これ全部?」
「言ったろ、南がいない間大変だったんだって」
両手に乗せられたのは、分厚い大量の書類。
おまけの試験管を書類の上に乗せられて、慌ててバランスを取る。
ぽんぽんと肩を叩いて笑顔で去るタップ。
任務の休息明けは、言われた通り仕事の山が待っていた。
また徹夜になるのかなぁ…。
「貸してみろ」
「え?」
げんなりと溜息をついていると、不意に書類の重みが消えた。
慌てて顔を上げれば、いつから其処にいたのか。
私の書類を持つリーバー班長の姿。
「これなら急ぎじゃないから。サンプルだけ先に済ませてくれればいい」
「あ、はい…あ、あの…」
書類を確認しながら、スタスタと運んだ先は私のデスク。
「じゃあ、よろしく」
「え、あ、」
何か言葉を投げかける暇もなく。
書類を置くと、背中を向けて去ってしまう。
あっという間で、流れるような自然な動作。
…でも今までそんなことされたことなかったから。
「…気遣って、くれてるのかな…」
まだ完治していない、傷のある胸元に手を当てる。
この怪我のこと、班長は誰にも言っていないようだった。
多分、科学班で知っているのは班長だけ。
「…よし。頑張ろう」
じんわりと染み入る班長の優しさ。
普段は厳しいけど、やっぱり根本はとても優しい人。
じんわりと心を温かくしながら、意気込んで椅子に座る。
少しでも班長の負担が減るように、仕事頑張ろう。
───そう、意気込んでたんだけど。