第4章 オレの好きなひと。
驚いた。
まさか南がここまで変わるなんて思わなかった。
少し化粧して、少しお洒落しただけなのに。
女って凄いさ。
オレの気持ちは最初から南に好意を持ってたけど、そのいつもと違う姿を見た途端。
初めて南への想いを自覚した時みたいに、オレの心臓はバクバクと脈打った。
「それで、何処に行くの?」
「この近くに、源泉から湯を引いてる足湯があるんさ」
強引に南の非番に合わせて出掛けようと誘った。
インドアな南をまさか誘えるなんて思ってなかったから、誘いに乗ってくれた時は素直に嬉しかった。
コムイにはリナリーの任務をオレが受け持つってことで非番を貰って、南が楽しめるようにプランも結構考えた。
こんなに真面目になんの、久しぶりかもしんねぇさ。
オレはブックマンJr.。
今はエクソシストとして黒の教団にいるけど、基本は世界の裏歴史を記録する"傍観者"となる者だ。
ノア側にもエクソシスト側にもつく。
ブックマンに"敵"も"味方"もない。
どちらか側に心を委ねたりしちゃいけねぇんだ。
でもオレは南を好きになった。
理由なんて特にない。
最初は、話してて面白い奴だなぁくらいにしか思ってなかったけど。
気付いたら、目で追っていて。
気付いたら、姿を探していて。
理由なんてないから、この心を簡単に覆せないんだろう。