第29章 人形劇の果てに
「じゃ、コマドリちゃん。ワタシの操り人形になっテね♪」
「いっ…!」
AKUMAの長い爪が、ひゅっとしなる。
ギリ、と手足に巻き付いた糸が強く締め付けてくると同時に、体が自分の意思に反して勝手に動いた。
「僕が援護します、ラビはAKUMAを!」
ラビとアレンが地を蹴る。
同時に自分の体が自分の体でないように、素早い動きで飛躍した。
「わ、ちょ…っ!」
「っ!」
軽々と飛んだ私の体はラビの懐に飛び込む。
それはAKUMAに与えようとする攻撃を、防ぐ行動そのもの。
ドンッ!とぶつかった体は、そのままラビと地面に衝突した。
「った…ッ」
「つ…大丈夫さ?」
反射的に閉じた目を開ければ、見慣れた団服が目の前にあった。
地下に転げ落ちた時と同じ、受け止められた感覚。
ラビが衝突から庇ってくれたんだ。
「ごめ…ッ!?」
慌てて顔を上げる。
だけど謝る暇もなく、くんっと勝手に動いた自分の腕はラビの鉄槌に絡んだ。
「そのまま捕まえてテね、コマドリちゃん」
「っ!悪ィ南ッ」
「えっ!?う、わッ…!」
真後ろでAKUMAの笑う声が聞こえたかと思うと、強い力でラビは鉄槌を放り出した。
私の腕は鉄槌に絡んでるから、そのまま一緒に地面に放り出される。
地面に転がる体に、思わず顔を顰めながら。
同時に、ズブリとラビの肩に突き刺さる鋭い爪が見えた。
「ラビ…っ!」
「あラ、イノセンスを放ってまで庇うなんて。オニイサン健気ねェ」
「じゃあ巻き込むんじゃねぇよ…ッ」
恐らく、村長さんを使ってアレンを攻撃した時と同じ。
私の体を通じて攻撃しようとしたAKUMAに、ラビが体を張って庇ったんだ。
「ぐ、あっ…」
「うフフ、いいわねェ。その苦痛に歪む顔、だーいスキ」
グリグリと刺さった爪を食い込ませるAKUMAに、ラビの口から鈍い悲鳴が上がる。
駄目、やめて。
「やめて…ッ!」
「コマドリちゃんはボウヤの相手よ」
咄嗟に駆け寄ろうとすれば、ぐんっと再び視界が揺れる。
また!?