第26章 再会
「…ごめんね」
必死に捜させたことも。
その体に怪我させてしまったことも。
色々混じる思いを抱えて、言葉を吐き出す。
「まぁ無事だったし。結果オーライさ」
肩を竦めて言うその言葉は、彼なりの優しさで。
「寧ろピンチに駆け付けるヒーローみたいで、格好良かっただろ」
ヘラッと、いつもの砕けた笑みを浮かべて茶化すように言った。
「…うん」
いつもなら、はいはいと聞き流すけれど。
今回、その姿に目を奪われたのは事実だったから。
「本当にヒーローみたいだった。ありがとう」
ラビがいなきゃどうなってたかわからない。
素直に感じた気持ちをそのままに、安堵と感謝で自然と笑みが浮かんでいた。
すると逆にぽかんと目を丸くしたのはラビの方。
…何、その反応。
「ッ…」
そして急にぱしりと自分の口に手を当てたかと思えば、あっという間に顔を背けた。
え、何。
なんで顔逸らすの。
私、変なこと言った?
「人がお礼言ってるのに、なんで顔背けんの」
「いや、ちょ…今こっち見んな」
「なんで。私別に変なこと言った覚えないけど。失礼じゃないですか」
「いいから、こっち見んなって。馬鹿になんてしてねぇからっ」
顔を覗き込もうとすれば、ぐいぐいと片手で制される。
結構な力で。
本当に見られたくないらしい。
「そーいう顔でさ、そーいうこと言うなっての…」
「何?」
「いいえ、なんでもありません」
後ろを向いたまま、はぁっと溜息ついて、ぽつりと呟かれた言葉は聞こえなかった。
…気になる。
でもこういう時のラビって、絶対教えてくれないんだよね…。
「もう…わかった、聞かないよ」
「ぜひお願いします」
結局折れたのは私の方で、仕方ないと頭を切り替える。
今はそんな言い合いしてる場合じゃない。
「これ、ありがとう。充分役立ったから、ラビが着てて」
羽織っていた団服を脱いでラビに渡す。
そこでやっと振り返ったラビは、もういつも通りの表情だった。
その手が団服を掴んで止まる。
何?
片方だけ見える彼の目は、団服を持つ私の手を見ている。
つられて視線をそこに向ければ、私の手は小刻みにだけど震えていた。