第24章 イノセンス
「あラ。なにが可笑しいの?オニイサン」
「…いんや別に。道理で平気だったんだと思って」
その現象の意味を悟ると同時に、思わず口元に笑みを浮かべる。
キョトンと首を傾げるAKUMAに構わず、腕を軽く上げる。
来い、早く。
「ちょっと頭退けてろ。じゃないとぶつかるさ」
「なニ───」
ヒュオッと、AKUMAのふざけたピエロの帽子を風が揺らす。
同時に、バチン!と勢いよく飛んできた"それ"が、オレの掌に収まった。
「遅ぇよ」
掌の中に向かって声をかければ、ジリ、とまるで答えるようにそれが熱を帯びた。
そこには見慣れたオレの相棒の姿。
「その感じ…まサカ、…イノセンス?」
「御名答」
AKUMAと同じ言葉で返して、くるりと指先で鉄槌を回す。
巨大化したその柄に掌を添えて、槌の部分を突き付けた。
イノセンスは物であって物じゃない。
オレの心と本当の意味で同調すれば、呼び寄せることなんて他愛もない物だ。
だから鉄槌を失くしても変な安心感があったのか。
「…後で南に言ったら、怒られそうさな」
なんで早く気付かなかったんだって。
…ま、そん時は謝って許してもらおう。
「とりあえず、」
目の前のこいつが先だ。
「オレが勝ったら、南の居場所を吐いてもらうからな」
「…いいワ、それナラ」
最初こそ驚いた顔をしていたものの、実力はあるのか。
にんまりと笑ってAKUMAは優雅に一礼した。
「オニイサンが勝ったら、もっとイイコト教えてあげル」
「…いいこと?」
眉を潜めて怪訝そうに呟けば、AKUMAは大きく裂けた口角を上げて、笑った。