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科学班の恋【D.Gray-man】

第85章 そして ここから



「ついさっきこっちで面倒見るつったばかりだからな…仕方ないか」

「っリーバー班長ぉおお!!室長が…!!!」

「ああハイハイわかった今行く!お前ら室長押さえてろよ!」



自分で自分に言い聞かせるように、深い溜息をつく。
そんな班長へ助けを乞うジョニーの叫び声に、長い足はあっという間に薄い膜を貼ったゲートの出入口を通り抜けた。

は、班長速い。
流石、室長のこととなると動きに迷いがない。



「って感心してる場合じゃない」



私も追いかけないと。
続くように、とぷりと薄い膜に片足を踏み込む。

ふと、背中が寂しく感じる。
振り返れば、其処には誰もいない静寂の空間だけ。
長く続く白い煉瓦道の果てに、私が通ってきた入口が見えた。
薄い銀色の膜。
その先には、暗い内装の黒の教団内部が続いている。

何か意図的な用事がない限り、もう戻らない場所だ。

…色んな後悔は、まだある。
きっと時には思い出して、落ち込みもする。
何度だって、こうやってまた振り返るだろう。

だって私は、まだ彼らの声を鮮明に憶えているから。

でも、見ていたいひとができた。
非力な私でも、守りたいと思えるひとができたんだ。
そんな自分のことを、ほんの少し誇らしくも思えるようになれたから。

私達が歩む道は、皆を見送ったこの白い桃源郷のような優しい世界じゃない。
険しくて、無情で、時に血にも染まる。
余所見をしていたら、すぐに転んでしまう道だ。
だから誰かと共に、歩むんだろう。

今は、その為に生きていたい。



「今までの時間は、私の中にちゃんと生きているから」



誰に言うでもなく告げる。
聞こえていてもいなくても、きっと、大丈夫。

これでさよならかもしれないけれど、さよならは言わない。
例えまた出会えるかはわからないけれど、いつかは私も向かう場所だから。

それまで暫くの間は、



「いってきます、ね」






そして、ここから。




















【科学班の恋】END.


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