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科学班の恋【D.Gray-man】

第24章 イノセンス



一体何が起きたのか、わからなかった。



「…南?」



最初は普通に喋ってた。
怖さを紛らわすように、思い出話なんかして。
繋いだ手が強張るみたいに力が入ってたから、何かと思って問い掛ければ、声が聞こえただなんて怖いこと言い出すし。

とにかく、そこまでは一緒だった。



だった、はず。



「おい、南…っ」



繋いだ手を離したのが駄目だったんだ。
何かから逃げるように、走っていた時には確かに傍にいた。
声も体温も感じてた。

なのに気付いたらそれは消えていた。

まるで最初からなかったみたいに、繋いでたはずの手の感触も残ってない。



「やめろよ、そういう冗談。オレそういうのほんと駄目なんだって」



昨日から幽霊だの心霊だのそんなのばっか。
本当に苦手なんだって。
吸血鬼のクロちゃんに初めて会った時より、怖いってこれ。



「声が聞こえたのも認めるし、怒らねぇからさ。だから出てこいよ、南」



敢えて明るく周りに声掛けながら辺りを歩く。
いや、明るくしてないとなんか怖いだろ。

ザクザクとオレだけの足音が響いて、他には何も聞こえない。
南の気配も、何も。



「っ…冗談だろ…」



霊なんてもん存在自体があやふやで、その癖変に強い力を持ってたりするから。
だから嫌いなんさ。

忽然と消えた南に不安と焦りが募る。

捜さねぇと。
南が神隠しなんてもんにあったら、取り返しがつかない。



───いや。
神隠しなんてもん、此処にはない。



「殺人犯が幽霊だなんて、馬鹿げた話はねぇさ」



今まで幾つもの国や土地を回ってきた。
色んな人に会い、色んな景色を見て、色んな戦争を学んできた。
AKUMAだって、その元となる材料は人間。
どの世も、一番怖いのは人間そのものだ。



「…?」



どうすべきかと思考を巡らせていると、不意にあの嫌な臭いが鼻に突いた。



「…この臭いは」



微かに臭ってくるそれは、確かにあの大量の骨が捨てられた場所と同じ臭いだった。

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