第83章 私の好きなひと。《リーバーED》
「南〜、このゴーレムの映像解析も追加ね〜」
「うわ、こんなに?」
「これはエクソシストの分。皆非番重なってる日は今日だけだから、一日で終わらせるようにってさ」
「一日でっ?なら手伝」
「手伝いたいのは山々だけど、オレもこの間アレンが持ち帰った石像の解析処理に追われてるし」
「でも」
「南のデータ化の腕には負けるからさ。んじゃっ」
「あ!ちょっと!データ化に腕なんてないけど!」
どん、とデスクの上に置かれる大きな段ボール箱。
急な視界の遮りに視線を上げれば、見慣れた職場の同僚、ジョニーの姿があった。
よれよれの白衣によれよれの顔。
ただでさえ体力の乏しいジョニーから否応なしに生気を奪っているのは、毎日続く残業の日々だ。
異議は申し立てたかったけど、ふらふらと立ち去るジョニーにそれ以上は何も言えず。
…仕方ないなぁ、もう…。
「はぁ……えっと、これはリナリーので…これは神田か…一番最初にしよ」
半ば浮いていた腰を椅子に下ろして、目の前の段ボール箱の中を漁る。
OFF状態のゴーレムを漁りながら、今日も残業漬けだなと溜息が零れた。
次から次へと舞い込んでくる終わらない仕事の日々。
今日も今日とて、科学班の多忙さは健在だ。
「…あれ?」
一つ一つゴーレムを確認しながらデスクに並べていけば、科学班や探索班や他班に比べて明らかに数が劣るエクソシスト達。
すぐに足りないゴーレムに気付いた。
明るいオレンジ色の髪に合わせて、ほんのり橙の色素を交えた黒塗りゴーレム。
雫のような形をしたそれは、眼帯青年の専用ゴーレム。
「ラビめ…」
段ボール箱の底や裏を探してみても、そのゴーレムは見つからなかった。
全く、提出し忘れてるな……また書庫室か自室で、記録に夢中な子供になってるんだろう。
ラビの分だけ後で処理してもよかったけど、こういうのは効率化が大事。
まとめて一気に終わらせて、心置きなく別の仕事に取り掛かれるようにしよう。
ということで、
「ちょっと出てきます」
「ん?何処に行くんだ?」
並べていたゴーレムを段ボール箱に戻して席を立つ。
声を掛けてくるロブさんに、椅子にかけていた白衣に袖を通しながら応えた。