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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



やがてぼそぼそと事の騒動を南が語り始めたのは、数分後。
その説明には長い時間を要した。
南が鼻を鳴らして涙混じりに話していたこともあったが、



「そ、そんな…リナリーさんがゾンビに、だと…!?」



バクがその度に驚愕の叫びを上げてしまうのも理由の一つ。



「り、リナリーさん…リナリーさ…リナ…」

「…泣かないで、バク支部長」

「ぅぅ…泣いてなどおらんわ…」

「よしよし」

「ぅぅぅ…」



結果、最終的には南がバクの頭を撫でながら、励ます側となってしまった。



「落ち着きました?」

「…このことは誰にも言うなよ。特にコムイには」

「言っても伝わりませんけどね…今のコムイ室長には…」

「うぐ。そ、そんな顔をするな」



明後日の方角を見つめる生気のない南の顔に、慌ててバクも身を引き締める。
状況は理解した。
となれば共に教団に訪れたジジ達もゾンビと化してしまったのだろう。



「そ、それでワクチンは───」



ガタンッ!



南の話には、クロウリーの血を手に入れた経緯が語られていた。
ワクチンさえ出来上がっていれば事も収束へと向かえる。
しかし尋ねようとしたバクを遮ったのは、ラボの奥から響く物音だった。
びくりと体を硬直させるバクと共に、南もまたああと目を向ける。
ガタンゴトンと響く激しい物音は、ラボの隣部屋から響いてくる。



「あ…あれはなんだ、椎名…」

「…時間か」

「? 時間とはなんだ」



腕時計を確かめた南が腰を上げる。
早足に向かったのはラボの機材がひしめき合う長机。
幾度も薬作りを試みたのだろう、乱雑に要品が散らばる奥の棚から小さな試験管を取り出した。



「ワクチンは出来上がってません。半分しか」

「半分?」

「私の力量じゃ駄目だったんです。ずっと改良は加えてるけど…私のワクチンじゃ、ウイルスの暴力性を一時的にしか抑えられない。正常に戻すことができないんです」



"No.68"と書かれた試験管のラベルを見て溜息をつく。



(リーバー班長に、託されたっていうのに…)



ぐ、と堪らず試験管を持つ手に力が入った。

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