• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



(なんで、この音が…)



ぐぷり、ぐぷり

濁ったような、潰れたような、奇妙で不可解な音。
それは目の前のリーバーから聴こえてきた。

固まった体が動かない。
唯一動かせたのは、食い入るようにリーバーを見ていた二つの眼球。

ぐぷり、ぐぷり

音を辿るように南とラビの目が辿ったのは、彼の腹部。
本来ならばきちんと白衣の下に着込んだ、彼のYシャツとベストとネクタイが見えるはず。

しかしそこにはあるべきものはなかった。
代わりに、あるべきではないものが見える。



「お前ら…生きでいるな」



しゃがれて濁った声。
それはリーバーの声ではなく、どことなく幼さが残る少女の声に似ていた。

ずぅるり、と蛇が巣穴から這い出てくるかのように、リーバーの腹部から覗いたもの。
それはぼさぼさの長い金髪を乱した、人間の顔だった。



「生きだ人間を探していだんだ」

「「………」」

「よがった…」

「「………」」

「…おい?」

「「………」」

「聞いでいるのか?」

「「………」」



絶句。
南とラビの反応はそれに尽きるだろう。

リーバーの腹部から覗いた人間とも呼び難い生き物が、声を掛けてきているのだ。
びしりと岩のように固まったまま動かない二人に、痺れを切らした"それ"が更にずるりと這い出してきた。



「おい」



爛れた小さな掌が、掴まえた南の腕に触れる。
それが合図だった。



「ひっ…きゃぁああぁああ!?!!!」

「うわぁあああぁあああ!!!!」

「!?」



風船が割れたかのように、弾けるような悲鳴を上げる南とラビ。
その驚き様は、目の前の少女が怯む程のものだった。



「ぉ、おい…落ちづ」

「たっ助けてぇええ!呪い殺される!!」

「呪い殺じたりしないから、落ちづ」

「ギャー!喋んな近寄んな南から離れろさ!このお、ぉおおぉおば、おばばおばばばばばばばば!!!」



口を挟む隙間もない。

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp