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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「…?」



鋭い歯が食い込んでいた手首の痛みが、多少和らぐ。
その違和感に薄らと目を開けば、ティムキャンピーを止める者などはおらず。
変わらず南の手首に齧り付くゾンビゴーレムだけが映り込んだ。

しかし痛みは先程より酷くない。
寧ろ段々と弱まってきている。



「…何…」



目の前のゴーレムを凝視すれば、やがて南は異変に気付いた。

敵意を持つかの如く遠慮ない力で噛み付いていたティムキャンピーが自ら、その行為を弱めていたのだ。
段々と力の入らなくなった口はやがて南の手首から離れ、赤く滲んだ傷跡をじっと目の無い顔で見つめる。

と、



「え?」



威嚇するように立っていた長い尾を垂らせたティムキャンピーは、舌を伸ばすと恐る恐る南の血を舐め上げたのだ。
羽根をも垂らし労わるように傷口を舐める姿は、先程までのゾンビゴーレムとは別人。
否、別ゴーレムだった。



「…ティム…?」



伺うように名を呼べば、ゆらりと応えるかのように金色の尾が宙で揺れる。
鋭い咆哮も威嚇するような動きも見せない。
じっと南の腕に大人しく乗ったまま、すりり、と小さな丸いボディを肌に擦り寄せた。

それは普段アレンの傍で見慣れていた、人懐っこいティムキャンピーそのものだった。



「…嘘(まさか。本当に?)」



先程と同じ驚愕の声を漏らして。
南はまじまじと、正気を取り戻したゴーレムを凝視したのだった。




















「本当に魔法の薬だった…婦長さん、すご」



どうやら半信半疑だった婦長手製の良薬は、コムイの魔の手をも凌ぐ力を持っていたらしい。

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