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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



「今日という今日はその巻き毛全部毟り取ってやる!面出せッ!」

「わわ…!ま、待って下さい班長!」

「ストップ!耐えて班長!」

「お前がキレたら誰がこの場をまとめるんさ!?」

「チッ、おいリーバー!」

「ニャー!」



袖を捲り拳を握るリーバー。
大の男が暴れれば、今のラビや神田でもそう簡単には押さえ付けられない。
大体彼は、この倉庫内で一番の常識人であり抗体を作る腕も持ち合わせた科学班班長。
でき得ることなら、力尽くで大人しくさせるのは避けたいところ。

南やロブ達も必死に宥める中、それでもリーバーの怒りは治まらなかった。



「うわー、久々に本気ギレしたリーバーくん見たよー。相変わらず怖いネ!」

「室長はもう黙って!」

「煽んなこの馬鹿!」



それは完全に、この神経を逆撫でしてくるコムイの言動の所為だろう。



「ど、どうしよ…そうだアレン!アレンなら止められるんじゃ…って何してんのっ?」



未だに松葉杖を付き、動きを制限されたジョニーでは暴れるリーバーを押さえられず、オロオロと青褪める。
はっと思い出したのは、エクソシストとして腕があり幼児化もしていないアレン。
彼ならば安全にリーバーを止められるかもしれない。
しかしアレンに助けを求めれば、何故か倉庫の隅っこで一人頭を抱えて上の空。

一体どうしたというのか。



「…はぁ…」



一人、騒動に加わることなく傍観していたリンクは深々と溜息をついた。
目の前には鬼の形相をしたリーバーに、白々しく驚いているコムイ。
何故こうも教団には頭の緩い連中が多いのかと、つい頭を抱えたくなる。
厳重たる規律に従う中央庁が恋しい。



「失礼、」

「え?」



それでもこの場を静めなければ、騒動を聞き付けたゾンビ化した団員達に見つかる恐れがある。
観察に長け、冷静な判断を下せる頭を回転させたリンクは、今一番最善の方法を見つけ出した。

とん、とリンクの手が触れたのは、白衣と獣耳の姿の彼女の背。



「これが一番効果があると思いますので。しっかり押さえて来て下さい」

「わっ!?」



そのまま強く押し出せば、よろけた体は簡単にリーバーの背中に衝突した。
振り返る暇もなく、南は目の前に広がる大きな背中に咄嗟にしがみ付いた。

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