第18章 地下へ
ぽっかりと空いた穴の中は、真っ暗な谷底のようだった。
「痛っ…!」
狭い通路にガツガツと体があちこちぶつかる。
痛さと衝撃に頭を抱えることしかできずにいると、強い力で何かに包まれた。
何───…
ドスンッ!
「い、た…っ」
確認する間もなく体が地面と衝突する。
思わず顔を顰めてふと、そんなに体が痛くないことに気付く。
…というか地面が硬くない。
「い…ってぇ…」
「えっ?ラビ…!?」
すぐ傍で聞こえる呻いた声。
私の体を衝突から守るように、抱いている腕。
ぽっかりと空いた暖炉の穴から薄らと落ちてくる光に、特徴的なその赤髪が見えた。
ラビが体を張って衝撃から守ってくれたんだ。
「怪我、ねぇさ?」
「私は大丈夫だけど…ラビこそ…っ」
「平気。南より体、丈夫だし」
慌てて退けば、軽く笑って返される。
よかった…。
「いちち…にしても、結構な高さあったなー」
上を見上げるラビにつられて視線を上げれば、落ちてきた穴が遥か上に小さく見える。
…これ、どう見ても偶然できた穴じゃないよね。
「あ!」
ふと思い出して、慌てて周りを見渡す。
暗い土の地面を見渡すと、傍に落ちていたそれはすぐに見つかった。
「よかった…!」
リーバー班長から預かってる御守りのネクタイ。
握り締めて安心と同時に息をつく。
「なんさそれ?ネクタイなんて、付けてたっけ」
「…ちょっとね。科学班の皆から貰った御守りだから」
そんな私を不思議そうに見てくるラビに、軽く笑って再び胸ポケットに大事に戻した。
…あれ?
なんで私、リーバー班長からって言わなかったんだろう?
別に隠す必要なんてないのに。