第1章 太郎さんの初恋と苦悩
『半年』 それは想像していたのよりもずっと長かった
紙を折り畳みそっとジャケットの胸ポケットの中へ入れる
「先生、僕は治療を受けません、本丸も離れません、最後まで審神者として働いて死にます」
医者は目を見開く、よっぽど驚いたらしい
「本当にいいのかい?」
「はい、私の居場所は本丸だけですから」
そう言うと説得を諦めたのか医者は「好きにしたまえ」といって退室した
孤児として政府に育てられ、何も疑わずに審神者になった、それについては何一つ後悔していない
初めて世のために何かできる、そう思ったからだ
だがその仕事を受け入れたためにこうして体を壊して死ぬことにもなった
「けど太郎さんに会えたからいっか」
誰に言うでもなく呟いて僕も部屋を出た