第1章 太郎さんの初恋と苦悩
気まずい沈黙を最初に破ったのは私だった
「主よ、体の具合は如何ですか?」
しかし何一つ返答は無かった
「主?」
「太郎さん、少し待ってて下さい」
そう言うと楽器ケースを置いて、机の引き出しから封筒を出した
「これを読んでください」
主から渡された紙に目を通す、そこには次郎太刀が話していた内容と同じことが書かれていた
「太郎さん、僕はもうすぐ死んじゃうんだ」
まるで天気でも言うように発せられた知ってはいたが言葉に驚きを隠せなかった
「でも太郎さん知ってたでしょ」
気づかれていた、弁明はせず小さく返事をした
「なぜ分かられたのですか?」
問いかけると主は微かに微笑んだ
「次郎さんが数日前からずっと私を心配そうに見てますよね、それでです」