Let's play our music!【うた☆プリ】
第15章 あの人の正体
昼休みの校内放送の後、教室に戻る足取りは重かった。
やることはやった、あれで後悔はない。
でもあの曲が皆にどう受け取られたのか、不安で仕方なかった。
「…もう、後戻りは出来ない」
教室の前で思わず止まった足をどうにか動かそうと試みるものの、震えが先立ちあと一歩が踏み出せない。
「……っ」
「よっ!!さっきの曲聞いたぜ?」
そんな怯えた私を救ってくれたのは、やはり仲間だった。
「翔…」
「何そんなとこで立ち止まってんだよ、ほら入ろうぜ?」
「…うん、そうだね」
翔に軽く背中を押され、扉を開く。
見慣れた教室の風景が全く違うものに見える心境が苦しくて堪らない。
私の姿が映った途端、教室中の視線が私に集中する。
鋭く、しかしどこか私を値踏みするようなその視線から思わず俯きたくなったものの、背に置かれている翔の手が温かかったから前を向いていられた。
暫しの静寂。
そして、
「曲聞いたよさん!」
「今までで一番グッときた!」
「私涙出ちゃったもの…!!」
途端に私の周りに人が集まった。
初めは何が起きたか分からなくて、呆気に取られた顔をしたと思う。
でも、そばにいる人の顔が笑ってて、翔がやったなと背中を叩いてくれたおかげで、徐々に分かってきた。
自分が、皆に受け入れられたのだと。
「良かったね、レディ」
「っ!!」
「神宮寺さん、華…!」
いつのまに近くに来ていた2人も私に声をかけてくれる。
それが尚更実感を持たせてくれて。
「…、どうしたの?」
「え…?」
気が付けば、涙を流していた。
「ううん、何でもない」
そうして、私がこのクラスにようやく溶け込めたその日の午後。
「一ノ瀬トキヤ。お前をもうこのクラスにいさせるわけにはいかねぇ」
一ノ瀬さんのSクラス降格が決まった。