Let's play our music!【うた☆プリ】
第12章 舞姫〜side神宮寺レン
きっと、一緒に踊った華も感づいたと思う。
周囲の視線が、彼女1人に集まったことに。
曲のイントロが流れ、がその腕をほんの少し動かしただけで会場の空気が変わったのだ。
和やかなものから、張り詰めたものへ。
誰1人視線を外すことは許さない。
そう告げているかのように。
「…っ…」
そうして踊り始めた彼女を言い表す言葉を、俺は知らなかった。
それはもはや別次元のもの。
今、が到達しているその領域は俺たちが踏み込むことのできない世界だった。
指先1つ、表情1つに魅せられる。
気付けば身体が熱を持ち、口角が上がって、まるで子供のようにきらきらした瞳で彼女を見てしまう。
こうした感覚を俺は前にも感じた。
それは、早乙女学園に入学した日。
シャイニング早乙女が挨拶してあの瞬間。
あの時味わった高揚感と胸の鼓動が、今胸の中で膨れ上がる。
「…、やっぱり真ん中は君の場所だ」
なぜなら君は、生まれながらのアイドルなのだから。
捉えたが最後、決して離さない。
麻薬のように強烈で、甘美な魅力。
自身がそれに気付いているかは分からないが、おそらく睦月麗奈は分かっていたのだろう。
だから彼女をパートナーとしたのだ。
俺は…そんな彼女の隣に立つに相応しい男になりたい。
でなければ、あの子のそばに居ることは出来ない。
今を見ている男達から守ることができない。
今、ようやく確信が持てた。
俺は彼女が………
曲が止み、静寂が訪れた。
彼女との約束を思い出し、誰より先に手を叩く。
それを皮切りに、会場が拍手の渦に飲み込まれた。
真ん中にいた彼女は、何が起きたか分からないという顔で呆然としている。
でもその瞳が俺を映した瞬間、表情が緩んだ。
「やれやれ…そんな顔されると期待しちゃうんだけどな、レディ」
美しくて、優雅で、でも鈍感。
そんな"舞姫"に、俺は精一杯の拍手と笑顔を送った。