Let's play our music!【うた☆プリ】
第4章 それが芸能界
「やったぁ、合格した!」
「おめでと、華」
数日後、レコーディングテストの結果発表があった。
私も華も、聞くと友ちゃんや春歌も合格したらしい。
「にしても凄いね、学年10位なんて」
「上には9人もいるよ、私なんてまだまだ」
謙遜するなって、と友ちゃんに勢いよく叩かれた背中に顔をしかめていると、春歌のもとに一十木さんがやってきて、何か話し始めた。
「彼が一十木くん?ふーん、なかなか...」
「何言ってんの、アンタには神宮寺さんがいるでしょうが」
「っ、もうってば!」
イケメンと聞くとすぐに物色する彼女をからかうと、彼女は一瞬で顔を真っ赤にして、周囲に件の彼がいないことを確認する。
「神宮寺さんならもう教室行ったよ、ほら私達も行こう」
「もー…」
口を尖らせる華を宥めながら教室に向かう。
相変わらず、人気のある神宮寺さんに一喜一憂している彼女は辛かろうと思うけど、隣で笑う彼女にそんな様子は見られなかった。
むしろそれを糧にしているような気さえするのだ。
この子の強さには脱帽する。
そんなことを思いながら途中Aクラスの前を通ると、そこの黒板の異変に気付いた。
「?どしたの、」
「ごめん華、先行ってて」
華と別れてAクラスの教室に入る。
黒板には、春歌への誹謗中傷が所狭しと書き込まれていた。
「春歌…」
拳を強く握り締める。
直接的な言葉も嫌だが、こうして己の犯行を知られることなく相手を傷つけるやり方はもっと嫌いだ。
頭に思い浮かぶのは、あの子の笑顔。
彼女も、悩んでいる。
悪意のある言葉に苦しんでいる。
"この学校、訳ありな奴なんかそこら中にいるからさ"
脳裏に神宮寺さんの言葉が蘇る。
私だけではない、この子も懸命に戦っていることを、私は気づきもしなかった。
共に立ち向かう仲間がいることを実感した私は黒板に向き合う。
私に対する悪意と向き合うように。
「似た者同士、だね」
状況は全く違うけれど、何かと戦うこの現状は同じだから。
「頑張れ、春歌」
罵倒ばかりの黒板の隅に、心からのエールを綴って教室を後にした。
私も、頑張るよ。
その後の道は、どこか吹っ切れたように足取り軽く歩けた。