Let's play our music!【うた☆プリ】
第25章 信じること
会場の空気は、一気に私の下で支配される。
その感覚が今も私の中に残っていた。
覚えている。いや、本能が知っている。
この空間をどうしたら自分のステージへと変えられるのか。
どうしたら皆が私を見てくれるのか。
その動作で、視線の動きで、観ている人を魅了する。
体が勝手に動くこの感覚は、ダンスパーティー以来だった。
それに加えて、久しぶりに人前で歌っているこの快感。
声が私の気持ちを皆に届けてくれる、この開放感。
懐かしい感覚が、私の気持ちを高ぶらせる。
テンションが上がる、いつもより大きく表現できる。
この喜び、この充足感。
たまらないね。
そして、視線を向けた先では大好きな人たちが笑ってくれている。
初めて見る人たちも、瞳を輝かせてくれている。
こんな、こんな幸せなことがあるだろうか。
"真ん中は君の場所だよ"
レンはそう言った。でも、分かる。
私がこうしてここにいるのは、皆のおかげだと。
たくさんの人たちが私のことを信じてくれて、私にこの場を与えてくれて、だから私はここにいる。
誰も頼らず、誰も信じてこなかった、1人でこの世界を生き抜こうとしていた私が、ここにいることが出来るのは。
皆が私を信じていてくれるからだと。
「…ありがとうございました!」
歌い終えた後も、会場は興奮冷めやらぬといった様子で盛り上がっていた。
私の名を呼んでくれるたくさんの声が、私の体を包み込む。
この中に、手紙をくれた人もいるのだろうか。そんなことがふと頭をよぎった。
「本当はこの曲、ワンコーラスじゃなくてフルコーラス歌う予定だったんです」
静かになってきた空間でマイクを持ち直し、語りかける。
私の突然の発言に会場はざわついたものの、それを制して言葉を続けた。
「それを私の我儘で変えてもらいました。なぜかと言うと、この歌だけでは私の全てを伝えられないと思ったからです。だから、私が私の本音を、全てをぶつける曲を、自分で作りました」
本当は、作曲家でありたかった私。
そんな私が、どうして再び歌おうと思ったのか。
皆さんにどうしても伝えたいことがあった。
「聞いて下さい。"Way to light"