Let's play our music!【うた☆プリ】
第23章 彼らの名は
全速力で走る。
階段を駆け下りて、道行く人をすり抜けて、ただ一ヶ所を目指してひた走る。
その先に、会いたかった人がいるのだ。
新グループ、ST☆RISHのライブは大成功に終わった。
赤、青、黄、紫、橙、桃の色を纏った青年が歌い、踊る。
眩く美しいそのステージは観客を魅了した。
「なんで皆が、それにこの曲…っ」
「落ち着きなよ、。答えは本人たちに聞いておいで」
「友ちゃん…?」
「これ、関係者用の腕章。行ってきな、皆待ってるよ」
友ちゃんに付けられた腕章と彼女を交互に見比べて。
やがて決意したように頷くと、私はありがとうと友ちゃんに呟いてから席を立った。
麗奈にも、QUARTET NIGHTの皆さんにも何も言えてないけど、彼らには分かっていたらしい。
何も言われることなく見送られた。
「ふふっ…若いっていいわね」
「何言ってんだ」
「思うがままに行動できるのだもの。あの時のあなたのように」
「…羨ましいか?」
「少しは。でも隣に蘭丸がいてくれる今が好きよ」
「くくっ、ばーか」
麗奈と黒崎さんの会話が背後で聞こえる。
その穏やかな声色と優しげな視線が、印象に残った。
あぁ、この2人は私を応援してくれる。
なぜだか、そう思えた。
関係者以外立ち入り禁止の入り口を開け、楽屋へと向かう。
すれ違った人たちが、いずれも新たなスターグループの誕生に胸を躍らせていた。
彼らは観客だけでなく、長年この世界でいろんなアイドルを見てきた人たちまでも魅了しているようだ。
将来が楽しみなグループだと。
そして、私が走る通路の奥から彼らの声が響いてきた。
成功を喜ぶ声、興奮を伝える声。
そのどれも知っていて、かつ懐かしくて。
私の鼓動が速くなる。
さっきまで用意していた言葉が何も思い浮かばなくなって。
頭の中が真っ白になって、熱いものまでこみ上げてきた。
それでも、この言葉だけは忘れなかった。
遠くで皆を優しげに見つめる瞳。
時に仲間をからかって楽しそうに緩む表情。
時に高く、時に低い魅惑的な声。
夕日のようなオレンジ色の髪を持つ、彼の名だけは。
「レン!!!!」